看護師として働いていると、日々の業務の中で患者の命に関わるという、大きな責任を感じていることと思います。
患者により良い看護を提供したいと感じてはいるものの、看護師の勤務形態は非常に激務でストレスも溜まりやすく、ミスにつながることも少なくないと思います。
常日頃ミスのないよう、徹底したダブルチェックや指導教育に力を入れていることと思いますが、万が一、患者との間で法的な問題に巻き込まれた場合、看護師としてどのように対応すればよいのでしょうか?この記事では、看護師の法的責任とトラブルを回避するためのポイントについて解説します。
1. 看護師の法的責任とは?
看護師は医療現場で患者のケアを行う上で、専門的な知識と技術を持ち、患者の命や健康を守る責任があります。法的責任には、大きく分けて以下の3つがあります。
(1) 医療過誤責任
医療過誤とは、看護師が業務中にミスを犯した結果、患者に不利益を与えることです。具体的には、薬の投与ミス、誤診、適切な処置を怠った場合などです。医療過誤は、民事訴訟に発展することがあり、看護師個人が責任を問われる場合もあります。
(2) 業務上過失致死・傷害
業務上過失致死・傷害とは、看護師が過失によって患者の死や傷害を引き起こした場合です。例えば、手術後の患者に適切なケアを怠ったり、無理な体位変更を行ったりすることで患者が怪我をした場合などです。この場合、看護師は刑事責任を問われることもあります。
(3) 患者の権利侵害
看護師は患者の権利を尊重する義務があります。患者に対して暴力的な行為をしたり、無理な治療を強要したりすることは、法的に問題となります。また、患者のプライバシーを守る義務(個人情報の漏洩を防ぐなど)もあります。
2. 看護師が注意すべき法的リスク
看護師が直面する可能性のある法的リスクには、以下のようなものがあります。
(1) 薬剤管理ミス
看護師は薬剤の投与を行う際、投与量や投与方法、患者に適した薬を選択する責任があります。誤った薬を投与した場合、患者に重大な影響を及ぼすことがあります。特に複数の薬を投与する場合や、薬剤にアレルギーがある患者の場合など、慎重な確認が必要です。
(2) 患者の同意を得ない治療
看護師は患者が治療に同意することを確認する必要があります。医療行為には「インフォームド・コンセント」が必要であり、患者に対して治療内容を十分に説明し、その同意を得ることが求められます。同意を得ないまま処置を行った場合、法的トラブルに繋がる可能性があります。
(3) 医療チームとの連携不足
看護師は医師や他の医療スタッフと連携して患者をケアしますが、情報の共有不足や誤解によってトラブルが発生することがあります。例えば、患者の病歴やアレルギー歴の伝達ミスが原因で医療ミスが起きることもあります。
3. 看護師が法的トラブルを回避するための方法
看護師として法的トラブルを回避するためには、以下のポイントを意識することが大切です。
(1) 適切な記録の保管
医療現場では、行った処置や投薬、患者の反応などを詳細に記録することが重要です。もし後で問題が発生した場合、正確な記録が証拠となり、看護師が正当な処置を行ったことを証明する手助けになります。
- 具体例: 投薬を行った際には、投与量、時間、患者の状態、指示した医師の名前などを記録します。
(2) インフォームド・コンセントを徹底する
治療や処置を行う前に、患者に対して十分な説明を行い、同意を得ることは法的に必須です。患者が理解し、納得した上での同意を得ることが、トラブルを防ぐために重要です。
- 具体例: 手術前には手術内容やリスク、予想される結果について詳しく説明し、患者から署名をもらうようにします。
(3) 医師や他の医療スタッフとのコミュニケーションを強化する
患者の状態に関する情報を共有し、疑問や不安があれば積極的に確認することが大切です。チーム全体での連携が取れていれば、ミスを防ぎ、スムーズなケアが提供できます。
- 具体例: 患者の病歴やアレルギー歴など、重要な情報をしっかりと確認し、共有することが必要です。
(4) 職場での研修や教育を受ける
法律や倫理に関する最新の知識を持つことは、看護師としての責任を全うするために不可欠です。定期的な研修や学習を通じて、法的なリスクに対する意識を高めましょう。
4.実際の医療現場で多くみられる事例
私が今まで働いてきた中で一番多い恐るべき事例は窒息です。
窒息の例としては主に痰による窒息と、食事中の窒息です。私は呼吸器内科で働いていたこともあり、肺炎の患者を多く看護してきました。寝たきりの方や、自分で痰が出せない患者に対しては看護師が吸痰を行います。痰の多い患者だと30分〜1時間に1回ほど頻回に取り続けます。しかしながら、頻回な吸痰の実施があっても気管支に詰まることがあります。
また、食事中の窒息においては主に患者が自身で食事できる時に限り起こることが少なくありません。看護師が介助し食事を摂取している場合は一口ずつゆっくりと嚥下していることを確認して介助し、危険な場合はすぐに食事を中止します。
しかしながら元々患者自身で食事を摂取している場合、むせや早食いといったリスクがない限り、すべての患者一人一人に看護師がついているわけではないため、窒息をされてしまう事例があります。
どちらにおいても看護師ができることは早期発見と、事例に対する急変時の対応をしっかりと把握し、実施することです。新人の方や経験年数の浅い方だと急変自体あまり見たことがないという方は多いと思います。しかし、見たことがないというだけでは絶対に自分や患者を守ることはできません。
先輩から話を聞くだけでも違いますし、自分自身が学習し、急変に備えることが大事です。
4. まとめ
看護師としての法的責任を理解し、日常的に適切な対応を行うことは、患者の安全を守るだけでなく、自己を守るためにも重要です。適切な記録を行い、患者との信頼関係を築き、医療チームと連携することが、法的トラブルを回避する鍵となります。日々の業務において、法的なリスクを避けるために意識を高め、より安全で質の高い看護を提供しましょう。
この記事を見てくださりありがとうございます。看護師として働く全ての方に、自分自身を守る方法を知り、この記事を参考に実施していただきたく思います。
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