終末期患者への看護:患者とその家族に寄り添うケアの実践

終末期患者のケア
At the hands of an elderly Asian who is seen at the end

私が今まで働いてきた分野は様々ですが、現在は終末期の患者も多い病棟で働いています。終末期看護は、患者だけでなく、その家族にとっても心の支えとなる重要な役割を果たします。終末期患者と関わったエピソードも交えながら今回は、終末期看護で大切にしたいポイントや具体的なケア方法についてご紹介します。

終末期看護とは

終末期看護とは、病気の進行が治癒不可能となった患者に対して、残された時間をいかに質の高いものにするかを考え、心身の苦痛を和らげるケアのことを指します。主な目的は以下の通りです:

  • 身体的苦痛の軽減
  • 精神的な安心感の提供
  • 家族へのサポート

終末期ケアで重要なコミュニケーション

終末期看護では、患者や家族とのコミュニケーションが欠かせません。

  • 傾聴の姿勢を持つ
    患者や家族が抱える不安や思いを、判断せずに受け入れることが大切です。
  • 率直で優しい説明
    病状や予後については正確な情報を伝えつつ、希望や安心を持てる言葉を添えることが求められます。
  • 非言語コミュニケーション
    手を握る、目を合わせるなどのスキンシップは、言葉以上の安心感を与えることがあります。

傾聴は終末期に限らず重要な看護の一つです。特に怒りや悲しみといった感情は表出してもらうことが大切です。以下は傾聴する時のポイントです。

ポイント説明
1. 相手に集中する他の作業やスマホを置いて、相手の話に全神経を向ける。
2. 話を遮らないアドバイスや自分の意見を挟まず、相手のペースで話を進めてもらう。
3. 相手の感情を受け止める感情を否定せず、「つらかったですね」など共感を示す。
4. 質問で理解を深める「具体的にはどう感じましたか?」などオープンな質問で、話を掘り下げる
5. あいづちを適切に行う「はい」「うん」「なるほど」など、自然なタイミングで合図を送り、話を促す。
6. 繰り返しや要約を活用する相手の話を要約したり繰り返して確認することで、誤解を防ぐ。
7. 判断せずに受け入れる話の内容を批判したり評価せず、自由に意見を述べられる安心感を提供する。
8. 非言語コミュニケーション視線、うなずき、穏やかな表情、リラックスした姿勢で、しっかり聞いている姿勢を示す。
9. 相手のペースに合わせる相手が感情的な場合でも急かさず、沈黙を含めた自然なペースを尊重する。
10. 話し手の意図を尊重する必要以上の解決策を押し付けず、相手が求めるものが「共感」か「助言」かを見極める。

身体的なケア:痛みと苦痛の緩和

  • 疼痛管理
    終末期の患者は疼痛が主な苦痛となることが多いです。適切な薬剤調整(モルヒネなど)や姿勢の工夫で痛みを軽減します。
  • 呼吸困難への対応
    酸素投与や体位の調整で患者の呼吸を楽にします。
  • スキンケア
    長時間同じ姿勢でいることによる褥瘡(じょくそう)を予防するため、定期的な体位交換や保湿を行います。

終末期における患者の安楽な体位は以下の表を参考にしてみてください。個人差はありますので、患者と相談しながら調整することが大切です。

体位名具体的な配置安楽性を高める目的注意点
仰臥位頭を少し高くする(薄い枕やクッションを使用)、膝の下に枕を置いて腰の負担を軽減。体重を均等に分散し、リラックスした姿勢を保つ。呼吸困難がある場合は、頭部を高めに設定。
側臥位片側を下にし、背中と脚の間にクッションを挟む。膝を曲げて安定させ、腕を軽く前に出す。呼吸を助け、褥瘡(床ずれ)の予防に効果的。下側の肩や骨突出部に過度の圧迫がかからないよう調整。
ファウラー位ベッドの頭部を30~45度持ち上げ、下肢をクッションでサポート。呼吸を楽にし、胃内容物の逆流やむせを予防。長時間続けると臀部に圧が集中するため、頻繁な体位変更が必要。
シムズ位下の腕を背中側に配置し、上の脚を曲げて枕で支える。胸部や腹部の圧迫を減らし、自然な姿勢を促進。患者の関節や姿勢に負担がかからないように柔軟に調整。
座位リクライニングチェアや車椅子を使用し、背中や足を支えるクッションを活用。呼吸を改善し、長時間の臥床による不快感を軽減。姿勢が崩れないようにサポートを適切に配置。
腹臥位顔を横向きにして寝かせ、胸部にクッションを配置して圧迫を軽減。特定の状況で、気道の開放や肺の酸素供給を促進。腹部に疾患や痛みがある場合は避ける。

精神的・心理的なサポート

  • 感情の受容
    患者や家族が怒りや悲しみを表すときは、その感情を否定せず受け止めることが大切です。
  • 安心感を与える言葉
    あなたは一人ではない」という気持ちを伝え、患者が孤独感を感じないように配慮します。
  • スピリチュアルケア
    宗教的な支えが必要な場合は、患者や家族の信仰を尊重し、それに沿ったケアを提供します。

家族へのサポート

患者だけでなく、家族のケアも終末期看護の重要な要素です。

  • 休息を促す
    家族が疲れ切らないように、専門職に任せる部分を提案することも大切です。
  • グリーフケア(悲嘆ケア)
    患者の死後、家族の心のケアを継続的に行うことが推奨されます。

実際に患者が亡くなった後は清拭や更衣を行います。その際、患者の家族にも声をかけ一緒に行いながら会話をすることも大切です。家族の同意があれば一緒に患者との思い出を振り返りながら体をキレイにしましょう。以下はグリーフケアのポイントです。

  1. 共感的な言葉:
    「つらい気持ちを話してくれてありがとう」や「あなたの気持ちは大切だよ」といった言葉で、感情を肯定する。
  2. 実際の行動支援:
    食事を届ける、手紙を書く、散歩に誘うなど、具体的な助けを提供。
  3. 記憶の共有:
    故人との思い出を共有したい場合には耳を傾け、写真やエピソードを一緒に振り返る。

終末期看護における看護師の心得

  • 共感と専門性のバランスを保つ
  • 自身のメンタルケアを大切にする(バーンアウト予防)
  • チームで連携してケアを提供する

特に働き始めの頃は患者の死というものに対しとても悲観的になり、自身のメンタルも傷つく可能性が高いです。私自身、長い入院生活の中でたくさんの話をしたり、悩みを聞いてもらったり濃く関わった患者の死は何度経験しても本当に辛いものでした。今でも忘れることはありません。

とても仲の良かった患者さん。亡くなる1週間ほど前まではお話ができていました。話せなくなって意識がなくなる前日の夜、私はその患者さんを担当していました。いつもなら寝ているはずの夜中にナースコールがあり、「ハルマメさ〜ん、見て!まだ元気なときに桜を見に行った時の写真😊」と、携帯の写真フォルダを見返しながら私に見せてくれました。その翌日から意識がなくなり、話せなくなってしまいました。亡くなる日は私が夜勤でその患者さんを担当していた時です。私のことをいつも待っていてくれた患者さん。その日は行くなり「ハルマメさん来たよ〜今日担当だよ〜」と何度も声をかけていました。その数時間後でした。私は私を選んでくれたのだと思いました。待っていてくれたのだと思いました。悲しいけど、家に帰って泣いたけど、私の中で大切な思い出となりました。人の死は本当に尊いものです。それを教えてくれた大切な患者さんです。これから先もずっと私の心の中で生き続けることでしょう。


まとめ

終末期看護は、患者とその家族の人生の最期を支える重要な役割を持っています。一人ひとりに合ったケアを提供し、安心と温かさを感じられる時間を共有することが、看護師としての大きな使命です。

患者一人一人の生きてきた証、生き様を私たち看護師は見ることができる唯一の職業です。

感謝の気持ちを持って看護しましょう。

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